スポーツ外来
スポーツ傷害には、他の選手との接触や着地の失敗、転倒などにより受傷する前十字靭帯損傷(ACL損傷)や半月板損傷、投球動作やテニスのスイングなどのように何度も同じ動作を繰り返すことにより発症する投球障害(野球肩、野球肘)やテニス肘などがあります。
以下に代表的な疾患について説明します。
- 代表的な疾患
各病態
前十字靭帯損傷(ACL損傷)
前十字靭帯損傷とは?
前十字靭帯は大腿骨と脛骨に付着している靭帯で、膝の安定性を保つために重要な靭帯です。
スポーツなどで膝を内側に捻って受傷することがほとんどで、受傷すると膝が外れた感覚(膝くずれ)がし、膝の痛みと腫れが出現します。ひどい場合は、歩けなくなることもあります。
検査
前十字靭帯損傷は、画像診断(MRI)や整形外科テスト(膝の不安定性をみる検査)などによって診断します。
治療法
- 保存療法
- 日常生活動作であまり支障がない場合は、保存療法で様子をみることになります。
リハビリで筋力トレーニングなどを中心に行います。
- 手術療法(前十字靭帯再建術)
- 損傷した靭帯の代わりに新しい靭帯を移植する手術を行います。
移植する靭帯には自身の身体から採取した腱(自家腱)を使います。自家腱はハムストリングス(太ももの裏の筋肉)から採取することがほとんどですが、膝蓋腱(膝の前面にある腱)から採取することもあります。
術後のリハビリ
それぞれの時期に合わせたメニューを理学療法士の指導のもとに行ってきます。- 術直後~術後6週:メディカル期
(患部の保護を優先) - 術後6週間~:移行期
- 術後3か月~スポーツ復帰:アスレチック期
(現場復帰を優先)
前十字靭帯損傷に関するQ&A
- Q1:保存療法の場合治療期間はどれくらいですか?
- 症状により異なりますが3~5ヶ月を目処に保存療法を行います。
- Q2:手術療法の場合、入院期間はどれくらいですか?
- 10~20日前後を目安にしています。
- Q3:手術療法の場合、仕事復帰はどのくらいですか?
- デスクワークや軽作業であれば退院後間もなく復帰できます。荷物運搬など膝への負担の多い作業はおおむね退院後1~2ヶ月以内に復帰できる見込みですが、術後の経過により作業内容を一部制限せざるを得ない場合もあります。
- Q4:手術療法の場合、スポーツ復帰はどのくらいですか?
- スポーツ種目にもよりますが、下肢(大腿四頭筋)の筋力が回復すればおよそ6ヶ月で、それぞれの競技の練習に復帰し始め、試合などへの復帰は9~12ヶ月を目安に行っています。
投球障害
投球障害とは?
野球などでボールを投げる事により生じる障害の総称のことであり、特に肩や肘に障害を発生することが多いです。原因は、①投げすぎ、②コンディショニング不良(身体の状態が悪い)③投球フォーム自体に問題がある、などが示唆されています。
- 肩関節
- 腱板損傷
- 肩上方関節唇損傷(SLAP損傷)
- リトルリーガーズショルダー
- 肘関節
- 内側側副靭帯損傷
- 肘部管症候群
- 肘関節内上顆の分節化
- 離断性骨軟骨炎
治療
- 保存療法
治療の基本は保存療法になります。
安静期間が必要な場合は投球禁止となりますが、できることからリハビリテーションを開始していきます。特に、①身体柔軟性の改善、②体幹と上肢、下肢の連動性を高めるトレーニング、③投球フォームの修正などを行い、肩肘に負担が減るような身体を目指します。
投球障害は投げることにより痛みが出現するため、障害の再発予防のためにも不良な投球フォームを修正することは大変重要となります。そこで、当院では実際に外にあるマウンドで投球動作を撮影し、その映像を見ながら投球フォームのチェックを行います。
- 手術療法
- 保存療法で治癒しない場合、手術療法も実施しています。
例えば、肘関節の離断性骨軟骨炎に対しては、①ドリリング法(痛んで不安定になってしまった骨や軟骨部分にドリルを作成し、骨髄部分から修復能力の高い細胞や成分を関節面部分に誘導し再生修復させる方法)や②骨軟骨移植(膝から採取した骨軟骨を肘のはがれた部分に移植し修復する方法)などを行います。
実際リハビリではどんなことをするの?
投球フォーム指導や評価をしながら人それぞれに合った治療、運動を行ってきます。
肩・肘のケガは早期治療で改善する事があります。
肩・肘に痛み、違和感等感じたら早めの診察を!!
院外活動
当院は、地域貢献活動の一環として、スポーツ傷害の早期発見や予防などを目的として、少年野球チームや中学サッカーチームに対してメディカルチェック(エコー検査、問診、身体機能検査)を行っています。
また、スポーツ傷害についての知識や理解を深めてもらうために講義を開いたり、ストレッチの指導などを行っています。