脊椎外科とは
体を支える背骨(脊椎)があり、これらが靭帯や椎間板(骨の間のクッション)で結合しており、体を動かすことができます。脊椎の中に脊柱管(骨のトンネル)があり、脊髄(神経)が通っています。
脊椎・脊髄疾患はこれらの部位が生活習慣・老化・遺伝など、様々な原因で障害を起こし、症状(痛み・痺れ・麻痺)が出現します。症状は、障害される部位によって異なります。
当院では、脊椎・脊髄疾患に対し保存療法(生活指導・装具療法・薬物療法・ブロック注射・リハビリテーション)、症状によっては手術を施行します。
各病態
頚椎症性脊髄症
頚椎症性脊髄症とは?
頚椎の加齢変化(椎間板の膨らみ・骨のとげの形成)により、脊柱管内の脊髄が圧迫されることを言います。
症状
手足の痺れや麻痺により、ボタンのはめ外しやお箸の使用など、指先が不器用になる、歩行で足がもつれるといった活動制限が出現します。
検査
レントゲン・MRI・CT・ミエログラフィーによる画像所見と神経所見、感覚検査、筋力測定などを行います。
治療法
- 保存療法
- 生活指導として、首を反らす行為は症状を悪化させる可能性があり、制限をします。
痛みが強い場合は薬物療法で飲み薬や張り薬を使用し、場合によってはブロック注射を行います。
運動療法では、首の筋肉をほぐしたり、首を支える筋肉を鍛えることで痛みの軽減を目指します。手足の痺れに対してはあずきを使用した知覚再教育などを行います。
- 手術療法
- 椎弓形成術(脊柱管拡大術)
- 頚部を後方より10cm程切開し、椎弓の一方に溝をほり、もう一方を切離し、扉を開くようにすることで脊髄の圧迫を取り除きます。
開いた椎弓にはスペーサーを挿入します。
入院は約2週間で、頚椎カラーの固定を行います。
手術翌日より歩行器歩行が可能となり、2日目よりリハビリによる知覚再学習や運動療法が始まります。
頚椎症性脊髄症に関するQ&A
- Q1:保存療法の場合、治療期間はどれくらいですか?
- 約3~6ヶ月が目安です。症状が強い場合、排せつ障害や麻痺が生じた場合は、早期に手術療法を行います。
- Q2:手術療法の場合、入院期間はどれくらいですか?
- 椎弓形成術は1~2週間の入院です。
- Q3:手術療法の場合、仕事復帰はどのくらいですか?
- 手術方法や症状により変わりますが、軽作業は2週、重労働は3ヶ月が目安です。
腰椎椎間板ヘルニア
腰椎椎間板ヘルニアとは?
腰椎に過度な前屈ストレスがかかり、椎間板内にある髄核が押し出されることをヘルニアと言います。
髄核が神経を圧迫すると様々な症状が出現します。
また、悪い姿勢での動作や作業、喫煙などでヘルニアが起こりやすくなることが知られています。
症状
腰部や臀部の局所的な痛みや、足に痺れや痛みが放散したり、麻痺(特に足首)が出現します。
また、痛みを避けるために背骨が横に弯曲することがあります。(疼痛性側弯)
検査
レントゲン、MRI、ミエログラフィーによる画像所見や、理学検査、感覚検査、筋力測定などを行います。
治療法
- 保存療法
- 前かがみや足を高く上げる姿勢は症状を悪化させる可能性があるため、日常生活動作に注意します。
また、姿勢の悪さがヘルニアを助長するため姿勢指導を行います。
痛みが強い時期は安静を心がけ、コルセットを装着することがあります。また、薬物療法で飲み薬や張り薬を使用し、場合によってはブロック注射を行います。
運動療法では、ストレッチング、腰を安定させるために筋力強化をします。
さらに、麻痺が出現している方に対しては電気療法を行うことがあります。
- 手術療法
- ヘルニコア注射
- ヘルニアを起こしている椎間板の髄核内に直接注射する治療 法です。 原則入院の必要はなく、治療後数時間の安静の後、体調に 異常がなければお帰りいただけます。
- 顕微鏡下ヘルニア摘出術
- 約3cmの皮膚切開で、顕微鏡から得られる立体的視野で確実にヘルニアを摘出し、脊髄の圧迫を取り除きます。
入院は約1週間で、固定のための装具は不要です。
手術翌日より歩行器歩行が可能となり、3~4日目よりリハビリによる姿勢指導や運動療法が始まります。
腰椎椎間板ヘルニアに関するQ&A
- Q1:保存療法の場合、治療期間はどれくらいですか?
- 約3~6ヶ月が目安です。症状が強い場合、排せつ障害や麻痺が生じた場合は、早期に手術療法を行います。
- Q2:手術療法の場合、入院期間はどれくらいですか?
- ヘルニコアは日帰り、ヘルニア摘出術は5~7日間の入院です。
- Q3:手術療法の場合、仕事復帰はどのくらいですか?
- 手術方法や症状により変わりますが、軽作業は2週、重労働は3ヶ月が目安です。
腰部脊柱管狭窄症
腰部脊柱管狭窄症とは?
加齢、労働、あるいは背骨の病気による影響で椎間板や靭帯の膨らみ、背骨や椎間関節から突出した骨などにより神経が通っている骨のトンネルが狭くなる(狭窄)ことを言います。
症状
腰椎が反らされることで狭窄を助長するため、背筋を伸ばして立っていたり、歩いていると、足に痺れや痛みが出現します。しかし、前かがみになったり、腰かけたりすると痺れや痛みが軽減します。歩行と休憩を繰り返す間歇性跛行が最も特徴的な症状で、長い距離が歩けなくなります。
進行すると、足の筋力が落ちる、肛門周囲のほてりや尿の出が悪くなることがあります。
検査
レントゲン、MRI、ミエログラフィーによる画像所見、間歇性跛行テスト、感覚検査、筋力測定。
治療法
- 保存療法
- 腰を反らす姿勢は症状を悪化させる可能性があり、日常生活に注意します。そのため、装具療法としてコルセットで腰を固定することがあります。また、歩行時に杖や歩行器の使用を提案することがあります。
痛みが強い場合は薬物療法で神経の血行を良くする薬や痛み止め、張り薬を使用し、場合によってはブロック注射を行います。
運動療法では、ストレッチング、腰を安定させるための筋力強化、有酸素運動を実施します。
さらに、麻痺が出現している方に対しては電気療法を行うことがあります。
- 手術療法
- 腰部脊柱管狭窄症では骨が安定している場合と不安定な場合があります。安定度の違いにより手術が異なります。
- 低侵襲顕微鏡下開窓術(骨が安定している場合)
- 約5cmの切開にて、脊髄を圧迫している骨、靭帯を取り除きます。
背中の筋肉を温存する方法を行っているため、手術後の痛みや筋肉のダメージを軽減できます。
入院は約1週間で、固定のための装具は不要です。
- 腰椎後方椎体間固定術(骨が不安定な場合)
- 約10cmの切開にて、脊髄を圧迫している骨を削り、不安定となっている椎体同士をスクリューと削った骨を移植して固定します。
入院は約2週間で、コルセットによる固定を約3ヶ月間行います。
腰部脊柱管狭窄症に関するQ&A
- Q1:保存療法の場合、治療期間はどれくらいですか?
- 約3~6ヶ月が目安です。症状が強い場合、排せつ障害や麻痺が生じた場合は、早期に手術療法を行います。
- Q2:手術療法の場合、入院期間はどれくらいですか?
- 開窓術は約1週間、固定術は約2週間の入院です。
- Q3:手術療法の場合、仕事復帰はどのくらいですか?
- 手術方法や症状により変わりますが、軽作業は1ヶ月、重労働は3ヶ月が目安です。
骨粗鬆症性脊椎圧迫骨折
骨粗鬆症性脊椎圧迫骨折とは?
尻もちをつく程度の比較的弱い外力によって生じる脊椎の骨折のことを言います。
胸椎と腰椎の移行部あたりに起こることが多いです。
症状
主な症状は、骨折部の痛みです。高齢者の場合、痛みによる動作困難で寝たきりになることがあります。また、様々な場所に多発性の椎体骨折が生じると背中が丸くなったり、身長が低くなることがあります。
検査
レントゲン、CT、MRIなどによる画像所見
骨粗鬆症に対しては尿検査、血液検査、骨密度検査
治療法
- 保存療法
- 生活指導として、前かがみの姿勢は骨折部に離開ストレスがかかり、骨癒合を阻害してしまい、禁止します。そのため、装具療法としてコルセットや石膏で背中を固定することがあります。
安静にすることで、3~4週ほどでほとんどが治癒します。
痛みが強い場合は、痛み止めや張り薬を処方します。また、骨粗鬆症に対する薬物療法として、骨吸収を促進、骨破壊を抑制する飲み薬や注射を行うことがあります。
安静にしすぎると足の筋力が落ちて寝たきりになってしまうため、装具で固定し歩行練習や運動療法を行います。
- 手術療法
- 経皮的バルーン椎体形成術
- 背中から針を挿入し、その先にあるバルーンを膨らまし、潰れた椎体のスペースを広げそこにセメントを流し固めます。
入院は約1週間で、コルセットによる固定を必ず行います。
手術翌日より歩行器歩行が可能となり、リハビリによる姿勢指導や運動療法が始まります。
脊椎圧迫骨折に関するQ&A
- Q1:保存療法の場合治療期間はどれくらいですか?
- 骨が癒合するのは約3ヶ月が目安です。また、骨折による痛みで日常生活困難な場合約2週間の入院もあります。
- Q2:手術療法の場合、入院期間はどれくらいですか?
- 経皮的バルーン椎体形成術の場合3~5日の入院です。