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肘関節外科

肘関節外科

当院では肘関節疾患を有するスポーツ選手や高齢者など、多岐に渡る患者様に対して、日常生活動作の改善やスポーツ復帰のための保存療法や手術療法を行っています。
肘関節の主な疾患は、以下のようなものがあります。

イラスト
日本整形外科学会HP
  • 野球肘

    繰り返す投球動作などにより、肘の痛みを訴えます。肘の内側では靱帯・腱・軟骨が痛みます。肘の外側では骨同士がぶつかって、骨軟骨が剥がれたり痛んだりします。

  • テニス肘

    中年以降のテニス愛好家に生じやすいのでテニス肘と呼ばれていますが、主婦や肉体労働者の方が多く発症します。一般的には、スポーツ動作や使い過ぎの他に年齢とともに肘の腱がもろくなり起こります。

  • 変形性肘関節症

    肘関節の酷使(スポーツ、重労働)肘関節内骨折などの肘関節外傷、関節炎などが原因としてあげられます。

  • 肘部管症候群

    肘の内側で神経(尺骨神経)が慢性的に圧迫されたり牽引されることで発症します。原因は、加齢や使い過ぎに伴う肘の変形、子供のときの骨折による肘の変形、等が挙げられます。

各病態

野球肘

野球肘とは?

繰り返す投球動作が主因となり、小学校高学年ころによく発症します。

野球肘には、主に内側と外側の障害があり、内側の骨端核の分節化(内側野球肘)、外側の上腕骨小頭の軟骨や軟骨下骨が剥がれてくる離断性骨軟骨炎(外側野球肘)があります。

イラスト
日本整形外科学会HP

症状

内側野球肘は、投球時や投球後に肘の内側の痛みが発生することが多いです。
小中学生で発症し一旦治癒しても、高校生以降に再発する場合は、内側側副靭帯損傷が疑われます。

一方、外側野球肘(小頭離断性骨軟骨炎)の初期は、痛みが発生しにくいと報告されています。しかし、病態が進行することで、関節が変形して肘の伸びや曲がりが悪くなったり、関節ネズミがはさまって、急に動かせなくなることもあります。

原因

野球肘の原因としては主に以下の3つが考えられます。
① 投げすぎ
② コンディショニング不良(身体の状態が悪い)
③ 投球フォーム自体に問題がある

検査

例えば、内側野球肘では、投球時の痛みや理学所見(徒手検査)で痛みが生じることに加え、レントゲン写真で以下のような所見が認められます。
適宜、MRI検査、超音波検査(エコー)などを実施します。

上腕骨内上顆下端裂離レントゲン写真
上腕骨内上顆下端裂離
治療経過1
10歳男子/外野手/左投げ/野球歴3年
投げ込み後より疼痛出現(以前より1日200球の投げ込み)
治療経過2
11歳男子硬式野球/内野手/野球歴8年
右上腕骨小頭離断性骨軟骨炎/広範囲透瞭型/保存療法

治療法

保存療法

内側野球肘の大部分は保存療法で対処できます。まず投球禁止期間を設けます。
その間に、コンディショニング不良を改善したり不良な投球フォームを修正します。

外側野球肘の治療法としては、まず投球禁止期間を設け、画像検査の経過観察を行い、病変の改善がみられる場合には、内側野球肘と同様の保存療法で対応できますが、病変の改善がみられない場合や、すでに進行している場合には手術の適応となります。

投球禁止期間は、内側野球肘は1ヶ月前後と短期間で、外側野球肘は6~12ヶ月と長期間を要します。

肩関節柔軟性の改善
肩関節柔軟性向上のストレッチング
肩甲帯柔軟性向上の運動
投球フォーム修正の例
当院では実際の投球フォームをビデオ撮影して、選手と相談しながらフォーム修正に取り組んでいます。
投球フォーム修正の例
手術療法
内側野球肘
高校生以降の内側側副靭帯損傷のうち、保存療法で復帰困難例に、内側側副靭帯再建術を行います。
腱移植による靭帯再建術を行い靭帯を補強する方法です。
外側野球肘
小頭離断性骨軟骨炎の進行例に行います。病変の状態により以下の3つの方法から選択します。
  • ドリリング…障害部位に直径1mm程度の穴をいくつか開け、出血を促し治癒を促進する方法です。
  • 骨釘固定…骨釘で離断骨軟骨を止める方法です。
  • 自家骨軟骨移植…損傷した骨軟骨部分を修復するために、膝や肋骨の骨軟骨を移植する方法です。
日本整形外科学会HP

野球肘に関するQ&A(保存療法)

Q1:保存療法の場合、リハビリはどのようなことを行いますか?
投球動作の休止と、肘への負担を減らす。投球動作指導・姿勢指導や、コンディショニング改善のトレーニングを行います。
Q2:どのくらいから投球再開できますか?
病態により異なり、内側野球肘は1ヶ月前後と短期間で、外側野球肘は6~12ヶ月と長期間を要します。

野球肘に関するQ&A(手術療法)

Q3:手術療法の場合、入院期間はどれくらいですか?
約3~7日程度となります。
Q4:手術療法の場合、投球再開、試合復帰はどれくらいですか?
病態や術式により異なり、内側側副靭帯再建術は投球再開が5ヶ月、試合復帰が野手で8ヶ月、投手で1年です。
小頭離断性骨軟骨炎の場合、投球再開はドリリングで術後3ヶ月、骨釘固定や骨軟骨移植では術後5~6ヶ月頃となります。

テニス肘

テニス肘とは?

中年以降のテニス愛好家に生じやすいのでテニス肘と呼ばれていますが、主婦や肉体労働者に多く発生しています。
一般的には、年齢とともに肘の腱がいたんで起こります。病態や原因については十分にはわかっていませんが、主に短橈側手根伸筋腱の起始部(下図赤丸)が損傷すると考えられています。
この短橈側手根伸筋は手首(手関節)を伸ばす働きをしています。

イラスト
日本整形外科学会HP

症状

ものをつかんで持ち上げる動作やタオルをしぼる動作をすると、肘の外側から前腕にかけて痛みが出現します。
多くの場合、上記のような動作時痛が主ですが、重症な場合は安静時痛も生じます。

治療法

保存療法

スポーツや手をよく使う作業をひかえて、湿布や外用薬を使用し、手首や指のストレッチングをこまめに行い、温熱・超音波療法を実施します。また、テニス肘用のバンドを装着します。
リハビリテーションでこれらをアドバイスします。

また、当法人では対外衝撃波療法(春日井整形にて)も行っております。
衝撃波を患部(肘)に照射することで、除痛効果や損傷した腱組織の再生が期待できる、整形外科領域では新しい治療法になります。

痛みが治まらない場合、肘の外側に局所麻酔薬とステロイドの注射をします。

手術療法
保存療法が無効な場合には、肘関節鏡視下手術により、傷んだ短橈側手根伸筋腱の起始部をクリーニングする方法や直視下に腱を骨に縫い付ける方法があります。
体外衝撃波療法
短橈側手根伸筋のストレッチングの例

テニス肘に関するQ&A

Q1:保存療法の場合、治療期間はどれくらいですか?
症状・経過により異なりますが3~6ヶ月程度を目処に保存療法を行います。
Q2:痛みを我慢して動かした方がいいですか?
いいえ。痛みを我慢して動かすと炎症を助長してしまうため、さらに悪化してしまいます。経過に応じて日常生活動作やストレッチングの指導をさせていただきます。

変形性肘関節症

変形性肘関節症とは?

スポーツや重労働による肘関節の酷使、肘関節内骨折などの肘関節外傷、関節炎などが原因としてあげられます。
病態は、外傷では関節軟骨が摩耗して骨が関節面に露出し、過剰な骨の突起(骨棘)ができます。骨棘により関節の動きは制限されます。
さらに進行すると骨棘が折れてかけらとなり、関節内の遊離体(いわゆる“ネズミ”)となって引っかかり、ロッキングの原因となります。
変形性肘関節症が進むと肘内側の尺骨神経が圧迫されて麻痺することがあり、肘部管症候群といいます。
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症状

運動時痛
肘を動かすと痛みが強くなり、安静にすると痛みは軽減します。

関節可動域制限、ロッキング
肘の動きが主に制限され、口に手が届かないなどの日常生活動作に支障がでます。
ロッキングとは急に屈伸ともにある角度で肘が動かない固まった状態で、少しでも動かそうとすると激痛を生じます。

検査

X線(レントゲン)検査では関節の隙間(関節裂隙)が狭くなり、骨棘形成、橈骨頭の肥大、軟骨下骨の硬化像が認められます。骨棘は鉤状突起と肘頭周囲や腕尺関節内側に多くみられます。

CTは骨棘や遊離体の位置・大きさなどを把握するのに有用です。

治療法

保存療法
保存療法では、日常生活でなるべく肘に負担のかからない安静指導、消炎鎮痛剤や関節内に注射をする薬物療法、温熱療法や筋力トレーニング・ストレッチングなどのリハビリテーションがあります。
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手術療法
日常生活に支障のある場合には、可動域の改善と疼痛の軽減を目的とした手術療法が行われます。これには、直視下で行う方法と関節鏡視下に行う方法とがあります。手術では、骨棘・滑膜の切除と遊離体の摘出術が主に行われます。
日常生活に支障のある場合には、可動域の改善と疼痛の軽減を目的とした手術療法が行われます。これには、直視下で行う方法と関節鏡視下に行う方法とがあります。手術では、骨棘・滑膜の切除と遊離体の摘出術が主に行われます。
手術的治療
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肘部管症候群

肘部管症候群とは?

変形性肘関節症が進むと肘内側の尺骨神経が圧迫されて麻痺することがあり、肘部管症候群といいます。加齢に伴う肘の変形の他に、肘部管にある靭帯やガングリオンと呼ばれるゼリー状の物質による圧迫などで肘部管症候群が生じます。

初期には、小指や薬指、小指側の手の側面にピリピリしたしびれを感じ、肘を曲げていると症状が増してくるのが特徴です。
症状が進むと小指の付け根や指の間の筋肉がやせ細り手指の動きが不器用になります。

肘部管症候群では、下図の★部分の肘の内側を軽くたたくと小指と環指の一部にしびれ感がはしります。

尺骨神経全体にわたり広範囲の症状が生じたり、安静時には知覚障害がない場合もあります。

肘部管症候群

治療法

保存療法
薬物の投与・日常生活でなるべく肘を曲げないようにするなど肘に負担のかからない安静指導などの保存療法を行います。
手術療法
保存療法が無効の場合や麻痺が進行しているときには、尺骨神経を圧迫している靱帯の切離などを行います。
神経の緊張が強い場合には、骨をけずったり、神経を前方に移動する手術を行います。
肘の変形がある場合には(外反変形など)、変形を手術的に治す場合もあります。
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変形性肘関節症に関するQ&A

Q1:手術の場合の入院期間はどれくらいですか?
約4~5日間になります。
Q2:手術の場合のスポーツや肉体労働への復帰期間はどれくらいですか?
約2~3ヶ月位です。

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